――彼を、討つ。
そう決断した時に、迷いはなかった。
それが正しいと信じていた。
たとえ、討たなければならない相手が最愛の人であったとしても。
たとえ、それを避けたいと心のどこかで思っても。
私にしてあげられることがそれしかないのなら。
彼を救うことが出来るのなら。
対峙した時も。
刃を交えた刹那も。
跪いた彼に刃を突き付けた時でさえも……それは揺らがなかった。
あと少し。
彼を屠るだけで、この無意味な戦いは終わる。
ゆっくりと切先を上げ、勢いのままに振り下ろし……
その段になって気付く。
……気付いて、しまう。
彼は、最後まで抗っていた。
信念のままに動き、戦い……全力で戦い抜いて。
須らく、その表情は憤怒。
理念を相容れぬ者に向ける、哀れみとも取れるモノ……だった。
それでも。
最期の瞬間だけ、彼は微笑んでいて。
気付いても遅い。
刃は彼の衣服を裂き、肉を裂く。
溢れ出す生命の赫。
焦点の合わなくなる瞳。
スローモーションのようにゆっくりと倒れる……身体。
……
…………
………………
何を思っているの?
その笑みの、本当の意味は?
血溜まりの中。
二度と動くことのない彼の身体を前に。
私もまた、倒れ込んでしまう。
何が正しいの?
何が間違っているの?
私が、したことの、意味は……?
わからない。
わからないよ。
誰か教えて。
誰か聞かせて。
誰でもいい。
お願いだから…………
コタエヲ、オシエテ。
そして。
全てが、壊れた。
死ぬ間際に走馬灯を見るとよく聞きますが…実際は子守唄に近いのかなあ、と思います。
それは優しいものであってほしい、そう願うから。